「基本情報技術者試験は、スマホのアプリだけで合格できるのか」――結論から言うと、科目Aと科目Bで答えが違います。科目Aは、IPA(情報処理推進機構)が公開している過去問が多く、1問1〜2分で解く四肢択一なので、アプリ中心でも対策を組み立てやすい科目です。一方の科目Bは、公開されている問題が限られるうえ、擬似言語のプログラムを紙に書きながら追う(トレースする)練習が欠かせません。そして合格には科目Aと科目Bの両方で基準点(600点)以上を取る必要があるため、科目Bをアプリだけに任せるのは危険です。この記事では、IPAの試験要綱と公開資料にもとづいて、アプリで回せる部分と回しにくい部分を切り分け、アプリを選ぶときに見るべき基準まで整理します(2026年10月時点)。なお、この記事は基本情報技術者試験の対策アプリ「AIナビスタ」を運営する私たちが書いています。

結論:科目Aはアプリ中心で回せる、科目Bは「アプリ+手で書く練習」

科目Aと科目Bでは、問われるものも、IPAが公開している問題の量も違います。試験時間・問題数は、IPAの試験要綱・シラバスのページで公開されている試験要綱(Ver.5.6)に記載されている値です。

科目A科目B
試験時間・問題数90分・60問100分・20問
1問あたりの目安約1.5分約5分
問われるもの知識(四肢択一)技能(アルゴリズムとプログラミング16問・情報セキュリティ4問)
IPAが公開している問題旧制度の午前試験を含めて多い公開問題とサンプル問題に限られる
アプリとの相性高い。短い問題を数多く反復できる中くらい。演習はできるが、量と画面の広さに限界がある
アプリ以外に足したいもの用語が曖昧なときの解説の読み込み紙に書いてトレースする練習

科目Aは「知っているかどうか」を短い問題で問う科目なので、通勤や休み時間に1問ずつ解いて解説を読む、というアプリの使い方とよく噛み合います。科目Bは1問に5分ほどかける科目で、20問のうち16問はプログラムの動きを追うアルゴリズムとプログラミングの問題です。変数の値がどう変わるかを書き出しながら考える力が問われます。アプリで演習すること自体はできますが、それだけで仕上げるのは難しい、というのが正直な評価です。

前提:合格には科目A・科目Bの両方で600点が要る

合格には、科目Aと科目Bの評価点がそれぞれ600点以上(いずれも1,000点満点)必要です(IPAの試験要綱)。片方の科目が満点に近くても、もう片方が600点に届かなければ不合格になります。基準点に届いた科目の成績も次回には持ち越せず、次回も両方の科目を受け直す必要があります(申込先のよくある質問)。

もう1つ誤解されやすいのが、この600点の意味です。評価点はIRT(項目応答理論)という方式で解答結果から算出されます。600点は「60問中36問の正解」のような単純な割合ではありません。試験要綱も、IRTで評価点を算出するため問題ごとの配点割合は無いとしており、同じ正答数でも評価点が同じになるとは限りません。そのため「何問正解すれば合格」とは言い切れません。また試験要綱には、科目Aは60問のうち56問、科目Bは20問のうち19問で評価を行い、残りは今後の出題のための評価に使うと書かれています。

つまり、得意な科目Aで稼いで科目Bの不足を埋める、という戦い方はできません。アプリで科目Aを固めるのは有効ですが、科目Bを後回しにしたまま試験日を迎えるのがいちばん危ない進め方です。なお、ITパスポート試験も同じIRTで採点されています。考え方はITパスポートの合格基準でも詳しく説明しています。

基本情報技術者試験でアプリだけだと足りなくなる3つの理由

基本情報技術者試験でアプリ学習の弱点になりやすいのは、次の3点です。どれも「アプリが悪い」というより、試験の性質から来るものです。

  • 科目Bの問題が少ない … 科目Aと科目Bの形式になったのは令和5年度からです。この形式の科目Bの問題としてIPAが公開しているのは、令和5年度以降の公開問題と、制度が変わる前の2022年に公開されたサンプル問題に限られます。たとえば令和8年度の公開問題は、科目Bが20問のうち6問(科目Aは60問のうち20問)です。どのアプリでも、IPAの問題として収録できる科目Bの量は多くありません。足りない分をオリジナル問題で補っているアプリもあるので、その場合は本番の出題形式にどこまで沿っているかを解説で確かめてください。
  • トレースは手を動かす練習が要る … 擬似言語のプログラムで、ループのたびに変数がどう変わるかを追うには、値を表に書き出していくのがいちばん確実です。頭の中だけで追うと、2周目・3周目で値を取り違えやすくなります。本番の試験会場でも、メモは会場が用意するメモ用紙とボールペンを使うと申込先の案内に書かれています。スマホの1画面ではプログラム全体と自分のメモを同時に見渡しにくいので、紙に書く練習はアプリの外で足しておくのが確実です。
  • 問題演習が中心のアプリは、基礎を一から学ぶのには向きにくい … 問題を解いて解説を読む形式のアプリは、すでにある知識を確かめるのは得意ですが、知らない分野を順を追って学ぶのは苦手です(AIナビスタもこの形式です)。解説がテキストの短文だけだと、IT未経験の人は科目Aの段階でつまずきやすくなります。

科目Bの形式でIPAが公開している問題は50問

科目Bの形式の問題として、IPAがこれまでに公開したものを数えると、次のとおりです(2026年10月時点)。

公開されたもの時期科目Bの問題数
科目Bのサンプル問題2022年4月6問
科目B試験のサンプル問題セット2022年12月20問
令和5年度の公開問題令和5年度6問(20問中)
令和6年度の公開問題令和6年度6問(20問中)
令和7年度の公開問題令和7年度6問(20問中)
令和8年度の公開問題令和8年度6問(20問中)
合計50問

本番の科目Bは1回20問なので、IPAが公開している科目Bの問題は、本番2回半ぶんにすぎません。科目Bの対策では、この50問を「何周するか」より「1問ずつ、なぜその答えになるかを説明できるか」で使い切るほうが効果的です。

基本情報技術者試験でアプリが向いていること

弱点ばかりではありません。基本情報技術者試験には、アプリと相性の良い面もはっきりあります。

  • 科目Aの演習量を積みやすい … IPAは旧制度の午前試験を含め、多くの年度の試験問題を公開しています(ただし過去問題のページにあるとおり、令和2年度から令和4年度の基本情報技術者試験の問題は非公開です)。1問1.5分ほどの四肢択一なので、スキマ時間に数問ずつ進めても積み上がります。
  • 間違えた問題の記録が残る … 解答の記録が自動で残るアプリなら、紙の問題集では手間のかかる「間違えた問題だけを解き直す」作業をすぐに始められます。
  • わからない用語をその場で確かめられる … 解説を読んでも腑に落ちない用語や計算を、そのまま調べたり質問したりできるアプリなら、つまずいた地点で止まらずに進めます。

科目Aはアプリで量を回し、科目Bは紙で深く掘る。アプリを使うなら、この役割分担が現実的な組み立てです。

基本情報技術者試験のアプリを選ぶ5つの基準

アプリで対策するなら、ストアの説明文で次の5点を確かめてから選ぶのがおすすめです。無料で使える範囲で数問解き、実際の解説の質も見てください。

基準確かめることなぜ大事か
① 問題の出どころIPAの公開問題か、オリジナルの予想問題か。収録している年度の範囲本番の出題形式に近い問題で練習できるか。令和2〜4年度はIPAが公開していないので、「全年度」をうたう表現は鵜呑みにしない
② 科目Bの扱い科目Bの問題を何問・どこから収録しているかIPAの公開分は限られる。数の多さより、解説でトレースの手順まで追えるかを見る
③ 解説の形式正誤だけか、テキスト解説か、動画もあるか未経験の分野を基礎から理解できるかが変わる
④ 通しの模試科目A 90分60問・科目B 100分20問の形で時間を計れるか1問ずつのドリルだけでは時間配分の感覚が身につかない
⑤ 料金の形無料でどこまで使えるか、買い切りか月額か試験日までの期間で総額が変わる。IPAの公開問題と解答例そのものは、IPAのサイトで無料で見られる

①については、出典が示されているかも目安になります。IPAは公開問題を使うときに出典を明記するよう求めているからです。ITパスポートと違い、基本情報技術者試験は科目Bの公開問題が少ないことを前提に、②と③を重く見るのがポイントです。

AIナビスタの場合:収録しているもの・していないもの

ここからは自社アプリの話です。アプリ「AIナビスタ」の基本情報技術者対策版で、何ができて何が足りないかを、上の5つの基準に沿って書きます(IPAから公認・監修を受けたアプリではありません)。

基準AIナビスタの基本情報技術者対策
① 問題の出どころIPA公開の試験問題1,699問(旧制度の午前1,509問、令和5〜8年度の公開問題104問、サンプル問題86問)を出典を明記して収録。令和2〜4年度は非公開のため含みません
② 科目Bの扱い公開問題・サンプル問題の50問と、オリジナルの予想模試の科目B 20問。量はこれが上限です
③ 解説の形式全問にテキスト解説。IPA公開の試験問題1,699問すべてに解説動画
④ 通しの模試本番と同じ問題数・制限時間のオリジナル予想模試(科目A 60問・科目B 20問)
⑤ 料金の形ダウンロードと一部の問題は無料。すべての問題は月額¥3,900(最初の3日間は無料)

このほか、試験日と実力診断テストの結果から毎日の課題を組み立てる学習プランと、わからない問題をその場でAIに質問できる機能があります。画面に直接手書きメモを残せるので、短いトレースならアプリの中でも書き出せます。プログラム全体を見渡しながらの練習は、上で書いたとおり紙のほうが確実です。

一方で、科目Bの問題数はIPAの公開分に縛られるので、このアプリでも多くはありません。また、教科書のように分野を順に読み進める講義は無く、問題ごとの解説と解説動画で学ぶ形です。科目Bは50問を1問ずつ、解説動画で手順を確かめながら「なぜその答えになるか」を説明できるまで掘り下げる使い方を想定しています。ダウンロードは無料で、無料のまま一部の問題に挑戦できます。すべての問題を解けるプレミアムプランは月額¥3,900で、最初の3日間は無料でお試しいただけます。

アプリ中心で進めるときの順番

アプリを軸にするなら、次の順番で進めると科目Bを取りこぼしにくくなります。

  1. 範囲の全体像をつかむ … 実力診断や学習プランで、テクノロジ系・マネジメント系・ストラテジ系のどこが弱いかを先に把握する
  2. 科目Aを分野別に回す … 1日に解く数を決めて毎日進める。間違えた問題は解説を読み、用語が曖昧なら動画やテキストで基礎に戻る
  3. 科目Bを早めに始める … 科目Aが仕上がるのを待たない。IPAのサンプル問題を紙に印刷し、変数の値を表に書き出しながら1問ずつ解く
  4. 通しの模試で時間を計る … 科目A 90分・科目B 100分を本番どおりに解き、どちらの科目で時間が足りないかを確かめる
  5. 弱い科目に戻る … 模試で600点に届きにくかった科目へ、残りの時間を寄せる

試験の日程にも注意してください。現行の基本情報技術者試験は、システムリプレースのため2026年12月28日以降に一時休止する予定です(会場によってはそれより前に終わる場合があり、再開時期は未発表です)。いつまでに申し込めば間に合うかは基本情報技術者試験はいつまで受けられるかにまとめました。なお、IPAが2026年3月に公開した試験制度の見直し案では、2027年度の新制度でも基本情報技術者試験は継続し、科目A 90分60問・科目B 100分20問という現行と同じ構成が示されています。科目Aの出題範囲の体系と科目Bの範囲の一部は変わりますが、IPAは「試験で問う知識・技能の範囲そのものに変更はありません」としています。公表内容は検討段階のもので今後変わる場合がありますが、いま積み上げている勉強は新制度でも土台になるはずです。

まとめ

  • 基本情報技術者試験は、科目Aと科目Bの両方で評価点600点以上が必要。科目Aで稼いで科目Bを補うことはできない
  • 600点は正解数の単純な割合ではなく、IRT(項目応答理論)で算出される評価点
  • 科目Aはアプリ中心で回しやすい。公開された過去問が多く、1問約1.5分の四肢択一がスマホと噛み合う
  • 科目Bはアプリだけに頼りにくい。IPAが公開している問題は公開問題とサンプル問題に限られ、トレースは紙に書く練習が要る
  • アプリは出どころ・科目Bの扱い・解説の形式・通しの模試・料金の形の5つで選ぶ
  • 2027年度の新制度(案)でも、基本情報技術者試験の試験時間・問題数は現行と同じ案が示されている

アプリは科目Aの量を支える道具として使い、科目Bは紙とペンで深く掘る。この分担を最初に決めておくと、試験日直前に科目Bで慌てずに済みます。