推論で問われるのは、「前提から必ず導けるか」だけです。ありそうでも、前提の外から仮定を一つでも持ち込まないと言えないなら、それは「断定できない」と判断します。ここでは順序・集合・数量・位置の5問を、解答・解説つきで用意しました。まず自分で解いてから、「解答・解説を見る」を開いて答え合わせをしましょう。
ここで紹介する例題は、SCOAの実際の問題ではなく、典型的な出題パターンを再現したオリジナル例題です(SCOAの問題は提供元が公開しておらず、公式の過去問は存在しません)。推論を含む数理全体の単元整理は「SCOAの数理(非言語)対策」にまとめています。
この形式では「明らかに誤り」と「断定できない」を同じ箱に入れます
5問すべて、次の形式で出題します。私たちがSCOA対策アプリを作るにあたって推論の型として採っている形式です(提供元は「数理」という尺度名しか公表しておらず、単元や出題形式の内訳は公開されていません。ですからこれは試験の仕様ではなく、あくまで私たちの整理です)。
各問題の[前提]に書いてあることを前提としたとき、選択肢の中で、明らかに誤りであるもの、あるいは与えられた前提からだけでは、はっきりと断定できないものを選び、記号で答えなさい。
ポイントは、「明らかに誤り」と「断定できない」が同じ答えの箱に入ることです。つまり選ぶべきは「前提から必ず正しいとは言えないもの」ひとつ。裏を返せば、残りの選択肢はすべて前提だけから必然的に導けるものです。
最大の失点源は、「ありそうだから正しい」と判断してしまうことだと私たちは考えています。「たぶんそうだろう」「普通はそうなる」は、前提の外から仮定を持ち込んでいる合図です。判定の物差しは一つだけ、前提だけで一本道に導けるかどうかです。
例題① 順序:前提が一本につながるとき
オリジナル例題 次の[前提]から、明らかに誤っているもの、または[前提]だけでは断定できないものを1つ選びなさい。
[前提] ・AはBより背が高い ・CはAより背が高い ・BはDより背が高い
ア Cは4人の中でいちばん背が高い イ AはDより背が高い ウ BはCより背が高い エ Dは4人の中でいちばん背が低い
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答え:ウ(明らかに誤り)
まず前提を不等号にします。
- A>B、C>A、B>D
- つなぐと C>A>B>D の一本になります
- 4人の順序がすべて確定しました
確定した順序に照らすと、各選択肢はこうなります。
- ア「Cがいちばん高い」→ 先頭はC。必ず正しい
- イ「AはDより高い」→ A>B>D なので、推移律から A>D。必ず正しい
- ウ「BはCより高い」→ 確定した順序では C>A>B、つまり C>B。BがCより高いことはあり得ません。明らかに誤り ← これが答え
- エ「Dがいちばん低い」→ 末尾はD。必ず正しい
前提がすべて一本の不等号につながるときは、全員の順位が決まります。この場合の答えは「断定できない」ではなく「明らかに誤り」です。まずはこの、迷いようのない形から確実に取りましょう。
例題② 順序:確定する部分と、確定しない部分を切り分ける
オリジナル例題 次の[前提]から、明らかに誤っているもの、または[前提]だけでは断定できないものを1つ選びなさい。
[前提] ・PはQより背が高い ・RはQより背が高い ・QはSより背が高い
ア Sは4人の中でいちばん背が低い イ Pは4人の中でいちばん背が高い ウ Qは4人の中で3番目に背が高い エ RはSより背が高い
解答・解説を見る
答え:イ(断定できない)
不等号にすると、P>Q、R>Q、Q>S。例題①と違い、一本につながりません。Qを真ん中に置いて、上にPとRがぶら下がる形になります。
P ─┐
├─→ Q > S
R ─┘
ここで、確定する部分と確定しない部分を切り分けます。
- 確定する部分:Qより高いのはPとRの2人、Qより低いのはSの1人。よって Qは3番目、Sは4番目で動きません
- 確定しない部分:PとRのどちらが高いか。前提にPとRを直接つなぐ条件が一つもないため、P>R でも R>P でも、すべての前提と矛盾しません
つまり、ありうる並びは P>R>Q>S と R>P>Q>S の2通りです。この2通りの両方で成り立つものだけが「必ず正しい」となります。
- ア「Sがいちばん低い」→ どちらの並びでも末尾はS。必ず正しい
- イ「Pがいちばん高い」→ 1つ目の並びでは正しいが、2つ目の並びではRが1位。片方でしか成り立たない=断定できない ← これが答え
- ウ「Qは3番目」→ どちらの並びでもQは3番目。必ず正しい
- エ「RはSより高い」→ R>Q、Q>S から推移律で R>S。どちらの並びでも成り立つ。必ず正しい
イは「明らかに誤り」ではありません。Pが1位の可能性は残っているからです。残っているけれど決められない、これが「断定できない」の正体です。「PはQより高いのだから1位だろう」と思った人は、前提にない仮定(PがRより高い)を足してしまっています。
推移律でつながるところだけが確定し、直接つながらない2人の上下は最後まで決まらない。 ここを毎回はっきり分けるのが、この形式の急所です。
例題③ 集合:「全て〜である」の向きに注意する
オリジナル例題 次の[前提]から、明らかに誤っているもの、または[前提]だけでは断定できないものを1つ選びなさい。
[前提] ・この事務所に勤めている人は全員、社員証を持っている ・社員証を持っている人は全員、資料室に入ることができる ・Yさんは資料室に入ることができる
ア この事務所に勤めている人は全員、資料室に入ることができる イ Yさんはこの事務所に勤めている ウ 資料室に入ることができない人は、この事務所に勤めていない エ 社員証を持っていない人は、この事務所に勤めていない
解答・解説を見る
答え:イ(断定できない)
「全て〜である」は、矢印(→)にすると向きを間違えません。
- 事務所勤務 → 社員証あり
- 社員証あり → 資料室に入れる
- つないで 事務所勤務 → 社員証あり → 資料室に入れる
大事なのは、矢印は一方通行だということです。「資料室に入れる人」の中には、事務所勤務でない人(来客、他部署の人など)がいてもかまいません。前提はそれを禁止していないからです。
- ア「事務所勤務の人は全員、資料室に入れる」→ 矢印を順にたどるだけ。必ず正しい
- イ「Yさんは事務所勤務」→ 分かっているのは「Yさんは資料室に入れる」だけ。矢印を逆向きにたどっています。Yさんが事務所勤務である可能性は残りますが、勤務していない可能性も同じだけ残る。断定できない ← これが答え
- ウ「資料室に入れない人は、事務所勤務でない」→ 「事務所勤務 → 資料室に入れる」の対偶。対偶は必ず成り立つ。必ず正しい
- エ「社員証を持たない人は、事務所勤務でない」→ 「事務所勤務 → 社員証あり」の対偶。必ず正しい
逆(→を反対向きに読む)は成り立たないが、対偶(両方を否定してひっくり返す)は必ず成り立つ。 この一行を覚えておけば、集合の推論はほぼ機械的に判定できます。イのような「ありそうな話」を正しいと判断してしまうのが、この形式の典型的な失点パターンです。
例題④ 数量:差は分かっても、金額そのものは分からない
オリジナル例題 次の[前提]から、明らかに誤っているもの、または[前提]だけでは断定できないものを1つ選びなさい。
[前提] ・AさんはBさんより300円多く持っている ・CさんはAさんより500円多く持っている ・BさんはDさんより200円多く持っている
ア CさんはDさんより1,000円多く持っている イ 4人の中でいちばん多く持っているのはCさんである ウ Aさんは1,000円持っている エ BさんとCさんの所持金の差は800円である
解答・解説を見る
答え:ウ(断定できない)
1人を基準に決めて、全員を文字でそろえます。 ここではBさんを基準にしましょう。
- Bさんの所持金を b 円とする
- Aさん = b + 300
- Cさん = Aさん + 500 = b + 800
- Dさん = Bさん − 200 = b − 200
これで4人の関係が C(b+800)> A(b+300)> B(b)> D(b−200) と、大小も差も全部確定しました。
- ア「CさんはDさんより1,000円多い」→ (b+800) − (b−200) = 1,000。b が消えるので、必ず正しい
- イ「いちばん多いのはCさん」→ b+800 が最大。必ず正しい
- ウ「Aさんは1,000円持っている」→ Aさんは b+300。b の値が前提のどこにも書かれていません。b が700円ならAさんは1,000円ですが、b が5,000円ならAさんは5,300円。どちらも前提と矛盾しない。断定できない ← これが答え
- エ「BさんとCさんの差は800円」→ (b+800) − b = 800。b が消えるので、必ず正しい
ウは「明らかに誤り」ではないことに注意してください。1,000円である可能性はちゃんと残っているのに、決められない。だから答えの箱に入ります。
この前提が語っているのは「差」だけで、「金額そのもの」は一言も語っていません。 引き算すると基準の b が消える主張は確定し、b が残る主張は確定しない。これが判定の境目です。
例題⑤ 位置:場合分けして、全部の場合で成り立つかを見る
オリジナル例題 次の[前提]から、明らかに誤っているもの、または[前提]だけでは断定できないものを1つ選びなさい。
[前提] A〜Eの5人が、左から1番〜5番の席に1人ずつ並んでいる。 ・Aは左から2番目に並んでいる ・BはCのすぐ右隣に並んでいる ・DはEより左に並んでいる
ア Dは左端に並んでいる イ CはAより右に並んでいる ウ Eは右端に並んでいる エ AとDは隣り合って並んでいる
解答・解説を見る
答え:ウ(断定できない)
条件が複数あって一発で決まらないときは、ありうる並びを全部書き出します。
- Aは2番で確定。残る1・3・4・5番にB・C・D・Eが入ります
- 「BはCのすぐ右隣」= C→Bの順で隣り合う。空いている席で隣り合うのは (3,4) と (4,5) の2通りだけです(1番の右隣は2番=Aなので不可)
- 場合1:C=3番、B=4番 → 残るのは1番と5番。DはEより左なので D=1番、E=5番 → D A C B E
- 場合2:C=4番、B=5番 → 残るのは1番と3番。DはEより左なので D=1番、E=3番 → D A E C B
ありうる並びはこの2通りだけです。2通りの両方で成り立つものが「必ず正しい」、片方でしか成り立たないものが「断定できない」になります。
- ア「Dは左端」→ どちらの場合もD=1番。必ず正しい
- イ「CはAより右」→ C=3番(場合1)でもC=4番(場合2)でも、Aの2番より右。必ず正しい
- ウ「Eは右端」→ 場合1ではE=5番で右端ですが、場合2ではE=3番。片方でしか成り立たない。断定できない ← これが答え
- エ「AとDは隣り合う」→ どちらの場合もD=1番・A=2番で隣。必ず正しい
ここでも構造は例題②と同じです。「Dが左端」「Aは2番」のように全ての場合で共通する部分は確定し、Eの位置のように場合によって変わる部分は最後まで決まらない。 場合を1つ書いた時点で判定を始めると、その1つだけを見て「Eは右端だ」と早合点します。書き出しは必ず最後までやってください。
判定の手順は、毎回この3ステップです
5問を通して、やっていることは同じでした。
- 前提を、不等号・矢印・式・並びのどれかに書き換える(頭の中で処理しない)
- 確定する部分と、確定しない部分を分ける(推移律や対偶でつながるところだけが確定する)
- ありうる場合が複数あるなら、全部の場合で成り立つかを確認する(1つでも成り立たない場合があれば「断定できない」)
このとき効く問いかけは、「その判断に、前提に書いていないことを足していないか?」の一つだけです。「PはQより高いのだから1位だろう」「資料室に入れるのだから社員だろう」——どちらも、書かれていない仮定を足しています。ありそうでも、前提に無いなら断定できない。 この線引きが、推論の得点をそのまま決めます。
逆に言えば、推論は覚えることがほとんどありません。書き出す・切り分ける・全部の場合で確かめるの3ステップだけなので、5問も解けば手が動くようになります。推論以外の単元と単元ごとの分量は、「SCOAの数理(非言語)対策」で私たちが整理した13単元の一覧として公開しています。私たちの整理では、収録した問題の重心も計算と規則性の側にあるので、推論の型を確認したら、そちらに時間を回すのが現実的です。なお、私たちのアプリ「AIナビスタ」に収録しているのも数理(非言語)だけで、言語・常識・英語・論理は入っていません。