SPIの推論のなかに、答えの値を求めない不思議なタイプがあります。問いに対して条件アと条件イが示され、受験者が答えるのは「どちらの情報があれば答えが1つに決まるか」だけ。この形式は「情報の推測」のほか「どれがあれば分かるか」などとも呼ばれ、呼び名は問題集によって揺れます。見るべき場所はただ一つ、候補が1つに絞れたかどうかです。まず自分で解いてから、「解答・解説を見る」を開いて答え合わせをしましょう。
ここで紹介する例題は、SPIの実際の問題ではなく、典型的な出題パターンを再現したオリジナル例題です。推論全体の解き方の型は「SPIの推論問題の解き方」で解説しています。順序・対応・位置といった通常の推論とは別の形式なので、そちらの練習は「SPI推論の練習問題5問」をどうぞ。
選択肢は、多くの問題集でこの5つの形で示されます。
- A アだけでわかるが、イだけではわからない
- B イだけでわかるが、アだけではわからない
- C アとイの両方でわかるが、片方だけではわからない
- D アだけでも、イだけでもわかる
- E アとイの両方があってもわからない
手順はどの設定でも変わりません。アだけを見て絞れるか、イだけを見て絞れるか、それぞれ独立に確かめる。両方とも絞れなかったときにはじめて、2つを合わせて考えます。この順番を崩すと、アの情報を頭に残したままイを検討してしまい、正解を取り違えます。
代表的な落とし穴は2つあります。ひとつは、条件から具体的な数値が出ないと反射的に「わからない」としてしまうこと。大小を問う設問なら、大小関係さえ決まれば十分です。もうひとつは逆で、候補が複数残っているのに1つ見つけた時点で「わかった」としてしまうこと。この2つを、以下の5問で作り分けています。
例題① 大小比較型:値が出なくても決まる
90個のクッキーを、P・Q・R・Sの4人ですべて分けた。4人の個数はすべて異なり、全員が少なくとも1個は受け取った。Sは40個だった。
[問い] QとSでは、どちらが多く受け取ったか。
ア PはQより多く受け取った イ QはRより多く受け取った
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答え:A
S=40個で確定しているので、残る50個をP・Q・Rの3人で分けます。
- アを見る。もしQがSより多いなら、Qは41個以上。アよりPはQより多いので42個以上。するとPとQだけで83個必要になり、50個を超えて成り立たない
- つまりQが40個を超えることはありえず、しかも4人の個数は全て異なるのでQ=40も不可。よってQは必ずSより少ない
- 個数そのものは決まらないが、問われているのは大小なので、これで答えは1つに定まる
- イを見る。Q>Rなら、たとえばQ=41・R=1・P=8で合計50、4人とも異なる。このときQのほうが多い
- 一方でQ=25・R=15・P=10でも条件を満たし、このときはSのほうが多い。2通りに分かれるので、イだけでは決まらない
引っかけの正体は、アからQの個数が1つに決まらないことです。通常の推論では差や値を求めて答えますが、この形式では決まるとわかった時点で作業終了になります。
例題② 組み合わせ列挙型:先に候補を並べる
1個120円のドーナツと、1個180円のマフィンを合わせて何個か買ったところ、代金はちょうど1,440円だった。ただし、どちらも少なくとも1個は買ったものとする。
[問い] ドーナツは何個買ったか。
ア 買った個数は合わせて11個だった イ マフィンの代金の合計は500円未満だった
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答え:D
条件アイを見る前に、ありうる買い方をすべて出しておくのがこの型の鉄則です。
- ドーナツをa個、マフィンをb個として120a+180b=1440。両辺を60で割ると2a+3b=24
- 左辺の2aは偶数、24も偶数なので3bも偶数、つまりbは偶数。b=2、4、6を順に入れると(a, b)は(9, 2)(6, 4)(3, 6)の3通り。b=8だとa=0になり、少なくとも1個という条件に反する
- アを見る。合計個数は順に11個、10個、9個。11個になるのは(9, 2)だけなので、ドーナツは9個と決まる
- イを見る。マフィンの代金の合計は順に360円、720円、1,080円。500円未満は(9, 2)だけなので、こちらも9個と決まる
両方が独立に同じ1通りを指しているのでDです。候補を先に3つ書き出しておけば、アとイは「絞り込みの網」を当てるだけの作業になります。
例題③ 連立型:片方ずつでは足りない
白・赤・青の3色のリボンが合わせて16本ある。どの色も少なくとも1本はある。
[問い] 赤は何本か。
ア 白は青より4本多い イ 白は赤の2倍の本数である
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答え:C
白をw、赤をr、青をbとすると、w+r+b=16という式が最初からあります。未知数が3つに対し、式は1本です。
- アを見る。w=b+4を代入すると2b+r=12。b=1ならr=10、b=2ならr=8、b=3ならr=6と何通りもあり、赤は決まらない
- イを見る。w=2rを代入するとb=16−3r。r=1ならb=13、r=2ならb=10、r=3ならb=7と、これも複数
- 両方を使う。w=2rとw=b+4からb=2r−4。これをb=16−3rに入れると2r−4=16−3r、整理して5r=20、r=4
- このとき白は8本、青は4本で、合計16本かつ全色1本以上を満たす
未知数3つに対し、式は元の1本にアかイのどちらか1本を足しても2本止まりです。3本そろってはじめて決まる、という数え方をしておくと見通しが立ちます。
例題④ 集合型:条件のふりをした無情報
あるゼミの学生30人に調査したところ、留学経験がある人は12人、インターン経験がある人は19人だった。
[問い] 留学もインターンも経験していない人は何人か。
ア インターン経験がある人は、どちらも経験していない人より多かった イ 留学とインターンの両方を経験した人は9人だった
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答え:B
両方を経験した人をx人とすると、少なくとも一方を経験した人は12+19−x=31−x人。よって、どちらも経験していない人は30−(31−x)=x−1人と表せます。
- アを見る。両方経験した人は留学経験者12人の一部なので、xは最大でも12。するとx−1は多くても11人で、インターン経験者19人のほうが多いのは常に成り立つ
- つまりアは、はじめから必ず正しい文であって、xの範囲を1ミリも狭めていない。何も絞れないのでアだけではわからない
- イを見る。x=9をそのまま代入して、どちらも経験していない人は9−1=8人と決まる
引っかけの正体は、アが不等式の形をしているせいで情報に見えることです。条件を見たら「これでxの候補は減ったか」と必ず問い直してください。減らないなら、それは条件ではありません。
例題⑤ 式不足型:両方あっても足りない
ある店で、月曜から金曜までの5日間の来店者数を調べたところ、1日あたりの平均は40人だった。
[問い] 水曜の来店者数は何人か。
ア 月曜と火曜の来店者数は同じだった イ 木曜と金曜の合計は、水曜の2倍だった
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答え:E
平均40人が5日間なので、合計は200人。これが唯一の手がかりです。
- アだけでは、月曜と火曜がそろっているとわかるだけで、水曜には何も及ばない
- イだけでも、木曜と金曜の合計が水曜と結びつくだけで、月曜と火曜が自由に動くので水曜は決まらない
- 両方を使う。月曜=火曜=a、水曜=c とすると、木曜と金曜の合計は2c。合計の式は2a+c+2c=200、つまり2a+3c=200
- a=49ならc=34、a=46ならc=36。どちらも5日間の合計200人とアイの条件をすべて満たす。水曜が34人にも36人にもなりうる
未知数は5日分の5つ、式は合計・ア・イの3本だけです。ただし、式が足りないからEと決めてはいけません。例題①は等式が1本しかなくても大小が決まりました。問われている値そのものが動くかを、実際に2通り作って確かめるところまでが一組です。
もっと解きたくなったら
情報の推測は、解く力より判定する力を問う形式です。アだけ、イだけ、最後に両方という順番を固定し、そのつど「候補は1つに絞れたか」とだけ自問する。この一本道を身体に入れておくと、初見の設定でも手を動かし始められます。
推論全体の型は「SPIの推論問題の解き方」に、順序・対応・位置の練習は「SPI推論の練習問題5問」にまとめています。例題④のような集合の考え方は「SPI集合の練習問題5問」で、非言語の全体像は「SPIの頻出問題と解き方」で確認できます。
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